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シュルレアリスム展-謎をめぐる不思議な旅-@宮崎展 [展覧会@マグリット]

宮崎は太陽も美術館もあつかった!

 「シュルレアリスム展-謎をめぐる不思議な旅」
 
2007年7月21日(土)~9月2日(日)
 宮崎県立美術館

 http://www.miyazaki-archive.jp/bijutsu/


埼玉で観れたので、本当はシュルレアリスム展の巡回にくっついていく予定なんて全くなく。
が、岡崎展は所用で大阪に行く途中で寄り道可能、山梨展は関東からなら日帰り圏内と、
ついつい足を伸ばしてしまった。こうなるとついつい他の会場まで気になってしまう。
そして何よりも今回は、マグリット単独展ではないにもかかわらず、
ポスターもチラシもチケットもマグリットづくし。
埼玉展と岡崎展では「現実の感覚」がどーんと迫り、
山梨展では「レディ・メイドの花束」がにこやかに微笑み、
美術館前に設置されてる看板の「白紙委任状」の後押しを受けながら迫ってきては、
もはや一本釣りされるのみ。

一番遠い宮崎展は、スケジュールも予算も交通・宿泊の予約も厳しかったけれど、
前々から「何故宮崎にマグリットの大作が?」と気になっていたので、
岡崎市美術博物館学芸員の村松さんの講演会、
宮崎県立美術館学芸員の園田さんのアートゼミにあわせて宮崎へ飛んだ。

 

まず気になるポスターは・・・がらっと変えてきた。

↓チラシ(ポスターも同デザイン)
   
宮崎=「現実の感覚」は当たり前過ぎる、でもこの作品は外せない。
そして「現実の感覚」だけではなくお宝は他にもてんこ盛りなんだぞ・・・という
アピールがこのデザインを生んだとか。
他の巡回展と一味違うけれど、黒地に緑字という基調カラーが統一感を醸し出してたり。


↓チケット
 
最近は展覧会毎のデザインではないとか。コスト削減の波がここにも。


が、図録は頑張ってる。限定部数特装版(各会場50部)有り↓

右の普及版(これだってロゴとか質感が凝ってる)を購入済だけど、
記念に欲しくなる毛皮ふっさーな感じの特装版の誘惑。
黒地に緑字のテーマカラーといい、この展覧会はデザインにも気合入れまくり。



それにていも宮崎は…半端なく暑かった。普通なら余裕で歩く距離もタクシーに乗ってしまう程に。
熱中症になるんじゃなかろうかと思っていたら、帰った直後に熱出してぶっ倒れてしまった。
(知恵熱だったと思いたい…。)

が、太陽だけでなく、美術館も熱かった。
夏の太陽を照り返す白っぽい建物も目に眩しかったが、
とにかく県民の為の、開かれた美術館、という印象。好感度大。
 
↑美術館正面。日差しが跳ね返る。

 
↑裏から見るとまた全然違った雰囲気。


 
↑今回は「白紙委任状」@看板はお休み。


まずは初日、アートゼミに参加。
展覧会チケットが必要だったのでギャラリートーク形式かと思っていたら、
展示室ではなくアートホールにてまず講義。
10名程度の参加だったので、自己紹介に始まってこぢんまりとアットホームな雰囲気。
でも内容は盛り沢山。しかも、講義を受けた後は、展示室でギャラリートーク開始。
一粒で二度美味しい!!感激。

アートゼミでは、この展覧会の企画の発端を聴くことが出来たのが非常に興味深かった。
そもそも宮崎県立美術館では、郷土の作家として瑛九の作品をコレクションをしつつ、
彼の絵に影響を与えたアーティストの作品をあわせて収集していった結果、
シュルレアリスムのコレクションが形成されたそう。
「現実の感覚」もそうやって所蔵された作品の一つだった。
そして2年前のデルヴォー展でも、村松さんが講演会の講師としていらっしゃったそうで、
色々話をしていく中でこの企画の種が蒔かれたとか。
それが今年こうやって実ったんだと思うとなんだか感慨深い。
(て、一観客に過ぎないんだけど。)

そして園田さんは、宮崎県立美術館に赴任された直後に「現実の感覚」を目にして
すっかり惚れ込んだそうで、その出会いの衝撃や夕暮れの空のグラデーションの美しさを
熱く語って下さった。
実は自分自身は、作品の存在を知るのが遅かったこともあって、
「現実の感覚」は「ピレネーの城」と「心の琴線」を足して2で割った様な印象だったのだけど、
園田さんが熱く語って下さったおかげで、この作品そのもののよさに気づくことが出来たのが収穫。
嬉しい。

そして2日目は、講演会を聴講。
岡崎展の展示を拝見して、(いい意味で)神経質でインテリっぽい文学者系の人かと想像していた
村松さんは、人当たりのいい穏やかな人だった。いや、親父ギャグまで交えてくれるなんて想定外。
(シュルレアリスムをわかりやすく身近に感じてもらう為の苦肉の策だったらしい…。)
講演会での収穫(といっていいんだろうか)は、マグリットとフーコーが親しくなかったという事実。
フーコーの「これはパイプではない」にはマグリットからの書簡が収録されていたので、
てっきり哲学を縁に楽しくやりとりをしていたのかと思いきや、そうではなかったらしい。
フーコーがパイプの絵をごちゃごちゃ解析するのにマグリットが腹を立て、
絵を観た少女が「これで煙草は吸えないよね」といったのが正解だと言っていたとか。
(この一言で片付いちゃったら、この絵を喧々諤々論じてきた人々は形無しになりそうだ…。)


展示全体の印象としては、展示の動線がわかりやすいのが観易くてよかった。
また、マグリットやデルヴォーは一つのコーナーが設けられている感じで、
その世界にゆったり浸かることが出来たのもファンには嬉しい。

写真に関しては、作品保護の為に照明がかなり落としてあったので
暗くて見えづらかったのが残念だけど、仕方ない。
また、デルヴォーの「森」やペリエ邸の扉絵の上方に当たる照明が少々絵に
白く反射してしまったのが、ガラスが無かっただけに残念。
が、その照明のおかげで、今迄気づいてなかった扉絵の筆致(重ね塗りした様な形跡)に
気づくことが出来たりして、何が幸いするかわからない。

山梨展で陰影の美しさを放っていたジャン・アルプの「植物のトルソ」は、
やや明るめの光の中で(周囲の壁がクリーム色か白だった)、
360度からぐるっと眺められる様に展示室の中程に設置されていた。
展示が変わればやはり印象が変わるもので、柔らかい感じ。

展示室出口には、展覧会を紹介した新聞記事と一緒に、各会場のチラシが。




そして企画展に気をとられて見逃しそうになった常設展、これがまた侮れず。
子供向けの美術館探検企画が催されていて、遊具まで設置された展示室内には子供多し。
中でも見逃してはいけないのが、「シュルシュル街4番地」と銘打たれた2階の小部屋。
各会場のチラシがこのコーナーではまた違ったレイアウトで展示されていて、
これがまた凝っていて、個人的にはツボだった。
作品数はそう多くないけれど(エルンストのコロタイプは企画展とかぶるのも一部あり)、
デルヴォーの水彩2点(個人的に好みな色遣い)にマン・レイのシルクスクリーン2点等々、
ミロ、アルプ、マッタ、ベルメール、ダリ、エルンストら、、早々たる顔ぶれ。
しかも、この常設展だけなら無料で観れるという太っ腹!

その他美術館のハード面では、館内にミュージアムショップにライブラリコーナーも
しっかりあるのが嬉しい。
特筆すべきは、スタッフの皆様の接客態度というソフト面。
もてなしの心があるというか、兎に角思いやりが感じられてお気遣いが有難かった。
なんて素晴らしい美術館の“顔”。
この場を借りてお礼申し上げたいと思います。大変お世話になり、有難うございました。


  ※ いつも、時間差あり過ぎなタイミングで記事書いてますが、
    宮崎展、9月2日迄やってます!
       ギャラリートークもまだあります。是非。(って明後日だけど。8月26日(日) 14時~。)
    

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おまけ。
美術館1階ロビーにて流れてた映像。









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コメント 2

いっぷく

猛暑の中、体調を崩すくらいの中でのお出かけでしたか、
宮崎まで出かけて行ってよかったということで
シュルレアリスム展を堪能できましたね。
宮崎県立美術館はすばらしいですね。
by いっぷく (2007-08-24 20:31) 

m25

>いっぷくさん
 いやほんとに、ギャラリートークに講演会と、興味深いお話が盛り沢山で、
 すごく楽しかったです。はるばる出かけた甲斐がありました。

 スタッフに恵まれてるのも素晴らしいと思います。いい美術館でした。
by m25 (2007-08-27 00:58) 

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