「フランスが夢見た日本―陶器に写した北斎、広重」展・ランベール編@東博 [展覧会@日本美術]
日仏交流150周年記念 オルセー美術館コレクション特別展
「フランスが夢見た日本―陶器に写した北斎、広重」展@東博
会場: 東京国立博物館 表慶館1階
会期: 2008年7月1日(火)~8月3日(日)
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=5558
では、セルヴィス・ルソー編に続いて、セルヴィス・ランベール編を。
(今回、画像が重いかもしれません。ご容赦をば。)
↓ セルヴィス・ランベール 「楕円形皿 鶏図」
のっけから、え、若冲?!と思わせる迫力のお皿が登場。
残念ながら、まだ原画は確定出来ていない模様。
↓ セルヴィス・ランベール 「平皿 鶏図」
セルヴィス・ランベールは、セルヴィス・ルソーと違って
デザインというより絵画的なんだけど、桜(?)に鶏など、
日本人ならやりそうにもない題材を組合せるのはルソーに同じ。
でもこれはなんだか全体的に明るくかわいい感じが漂うけれど、
↓ セルヴィス・ランベール 「平皿 梅に蝉図」
こちらは梅の木だけみれば背景の余白とあいまって
わびさびの気配すら漂いそうなところに・・・蝉。
現実にはありえない光景。
でも実際、遠い異国の四季だの自然だのを知っているはずもなく。
でも想像でここまでつくれるってのはそれはそれで凄い様な。
季節を無視すれば、絵としてなりたってるし。
知らないからこそ、想像力が自由に羽ばたくのか。
それとも、事実をありのままに描くのではなく、
描きたい様に描く西洋絵画の一端だったりするのか。
はて。
まあ、日本人にはありえない組合せもフランス人は違和感を感じないとはいえ、
虫を素材にするのは微妙なところ。
だがしかし、捕食してる場面迄作品にするなんて、何かそこに美を見出してるのか・・・。
謎だ。
↓ セルヴィス・ランベール 「平皿 頬赤図」
↓ セルヴィス・ランベール 「平皿 雛と蜥蜴図」
とはいえ、アレンジ能力の高さは見事。
換骨奪胎して自在にイメージを操る。
↓ 河鍋暁斎「『暁斎楽画』 乾の巻 太湖石と群蛙」
↓ セルヴィス・ランベール 「深皿 太湖石と群蛙図」
↓ 河鍋暁斎「『暁斎楽画』 乾の巻 蓮に亀」
↓ セルヴィス・ランベール 「深皿 蓮に亀図」
水彩の儚げな色合いをよく再現してるものだと感心。
↓ 河鍋暁斎「『暁斎楽画』 坤の巻 鯉と手長海老」
↓ セルヴィス・ランベール 「深皿 鯉図」
上の絵と下の絵で水の動きと鯉の描写が異なるところも、
表現力の高さ、巾の広さが感じられる。
↓ セルヴィス・ランベール 「深皿 鯉図」
↓ セルヴィス・ランベール 「深皿 波に鯉図」
・・・かと思えば、荒波にもまれて、なんともいえない表情してたり。
↓ セルヴィス・ランベール 「平皿 海老に鯛図」
今回、多少微妙なとこがあっても、展示も図録も全般的に満足度が高かったのに、
納得いかなかったのは、このお皿の表側しか図録(葉書)に載っていなかったこと。
足がついてたり、裏表に絵柄があったりする食器を360度見せられない
(載せられない)のはまだいいとして
(とはいっても出来ればディスプレイでは鏡をつかったり
360度から眺められたり出来る様にして欲しかったところ)、
上のお皿は、鯛の胸鰭から尻尾までが裏側に続いて描かれていたのに!
この画像だけでは、そんなこと全然わからない。
実際のディスプレイでも、真裏ではない位置で腰を屈めれば見える程度で、
見せてはくれるけど積極的に見せてるのか微妙なところ。
勿体無い!!
・・・なんてことに気をとられて、2度目の鑑賞で他の人が
「海老で鯛を釣る」と話してるのを耳にする迄、そのことに気付いてなかった・・・。
鯛のお頭と海老が一直線だなんて変わった構図だなぁくらいにしか
思ってなかった。
よくよく見れば、海老の腰の入れ方がナイスでツボにはまる。
なのに見逃してたなんて、どんだけ眼力ないのか、自分。もう脱力。
それにしてもこれ、どこから引っ張ってきたんだか。
こんな絵を描くセンスを持ってた人が誰か、すごく気になるところ。
・・・さて、無理にでも気を取り直して次の見所へ。
普段、人物画の浮世絵には興味がわかないのだけど、
次の2点は絵がとても鮮やかで見入ってしまった。
が。
なんとその人物を捨てて背景だけレイアウトする大胆さ。
人物画は好みでないのか、難しすぎたのか。
↓ 歌川広重・三代歌川豊国 「『双筆五十三次』 藤沢」&セルヴィス・ランベール 「平皿 藤沢図」
↓ 歌川広重・三代歌川豊国 「『双筆五十三次』 浜松」&セルヴィス・ランベール 「平皿 浜松図」
そしてさらには、冨士山すらカットされる。
日本人にはまず出来ない芸当。
↓ 歌川広重 「『五十三次名所図会』 吉原 不二の沼浮島か原」&セルヴィス・ランベール 「深皿 吉原不二の沼浮島か原図」
裾野だけ描いたといえなくもないけど、基の絵を知らない限り、
富士山の裾野だとわかる人はまずいまい。
↓ 歌川広重 「『五十三次名所図会』 沼津 足柄山不二雪晴」&セルヴィス・ランベール 「平皿 沼津足柄山不二雪晴図」
かろうじて左端に留まってはいるけれど、
構図がどうというよりもただの背景と化している。
・・・と、そんな感じで色々、感心したり驚いたり、奥の深い展示だった。
そんなかでも特にひきつけられたのが下記2点。
↓ 葛飾北斎「『北斎漫画草筆之部』 雪中柴舟図」
↓ セルヴィス・ランベール 「平皿 雪中柴舟図」
一面の水色に茶色の線が効いていて、
吸い込まれそうな独自の世界が広がってる。
↓ 葛飾北斎「『唐詩選画本』 七言律 万年蟹」葛飾北斎「『唐詩選画本』 七言律 万年蟹」
↓ セルヴィス・ランベール 「平皿 波に蟹図」
シンプルな絵手本からここまで和を感じる描写が出来るとは・・・。
もう、これだけ描けるのであれば、
普通に紙と筆渡したら如何程の日本画を描いたのかと。
是非観てみたかった。描いたものがどこかに残っていたりしないだろうか。
今後の研究に勝手に期待。
製作者名を隠して1点だけ鑑賞したら先入観で日本人が描いたものと
疑問も持たないでしょう。
全体を見渡せば細部や題材に違和感を感じるけれど、
フランス人が描いたとは秀逸ですね。
日本に生活して描くのと異国で描くのとはそうとう違いますからね。
フランス人が日本文化や精神性を絵に込めるのは至難のこととわかりますね。
それと逆に西洋に旅行程度で滞在した日本の人が描く西洋にも同じことを感じます。
by いっぷく (2008-08-02 08:37)
>いっぷくさん
フランス人製作とわかっていても、
ランベールの筆遣いの繊細さには感嘆するばかりでした。
ありえない組合せもごく自然に1つの絵にまとめてしまってるので、
日本人でなければ違和感を感じることはないでしょうね。
しかも紙の上どころか、陶磁器に描いてるのですから、
どうやって技術を習得したのか、そのスキルの高さには驚くばかりです。
フランスに行く機会があれば、是非ご覧頂きたいと思います。
そして、異国の文化を会得することの難しさ。
想像することは出来ても、実感として理解することは難しいですから、
経験者の言葉の重みを感じます。
by m25 (2008-08-03 00:15)