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ジョン・エヴァレット・ミレイ展@Bunkamuraザ・ミュージアム [展覧会@西洋美術]

 「ジョン・エヴァレット・ミレイ」展
 http://www.asahi.com/millais/

ミレイといえば「オフィーリア」、「オフィーリア」といえばテート・ギャラリー、
と明確に頭に刷り込まれているものの、
「オフィーリア
 」以外のミレイを知らなかったりする。

でも有名な作家ながら意外に目にする機会がなかったのも事実で、
お膝元の英国でも100年程個展が開かれていなかったというから驚き。
それがイギリス、オランダを巡回した大規模展が日本に来るなら、
なんといっても見逃せない。
(北九州と東京だけだなんて、なんと勿体無いことか。)


■ 東京展
会場: 
Bunkamuraザ・ミュージアム
会期: 
2008年8月30日(土)~10月26日(日) ※会期中無休
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/shosai_08_jemillais.html


■ 福岡展
会場: 北九州市立美術館
会期: 2008年6月7日(土)~8月17日(日)


↓ チラシ
ジョン・エヴァレット・ミレイ展チラシ表.jpg ジョン・エヴァレット・ミレイ展チラシ裏.jpg

↓ チケット
ジョン・エヴァレット・ミレイ展チケット.jpg

チラシはもう、迷うことなくまさにこれ1点で客が呼べる「オフィーリア」。

そういえば、前回来日時のテート・ギャラリー展のチラシも「オフィーリア」だった↓
テート・ギャラリー展チラシ表.jpg 1998年@東京都美術館


やはり「オフィーリア」は外せないというところだけれど、
だからといって今回の目玉はこれだけではない、どころか粒揃い。


展覧会の構成は下記の通りで、出品点数は約80点。大きいサイズの作品もわりとあり。
 Ⅰ ラファエル前派 Pre-Raphaelitism
 Ⅱ 物語と新しい風俗 Romance and Modern Genre
 Ⅲ 唯美主義 Aestheticism
 Ⅳ 大いなる伝統 The Grand Tradition
 Ⅴ ファンシー・ピクチャー Fancy Pictures
 Ⅵ 上流階級の肖像 Society Portraits
 Ⅶ スコットランド風景 Scottish Landscapes


≪Ⅰ ラファエル前派≫
 
  「ギリシア戦士の胸像」 (黒のチョーク、白のハイライト・紙/1838-39年頃)
  ・・・
初っ端から、度肝を抜かれてしまった。
  「史上最年少の11歳でロイヤル・アカデミーに入学」という説明を読んではいても、
  目にした作品はとても10歳やそこらで描く絵には見えない。
  しかも、単に緻密に線を重ねて写実的にしました、というのとは一味違う。
   恐るべし、の一言につきる。


  「聖アグネス祭前夜」 (ペン、セピアインク、緑の淡彩・紙/1854年)
   油彩以外で今回の一番のベスト。
  素描といえば習作、のイメージを覆す一品、もとい逸品。
  セピアのインクと緑の淡彩の織り成す独特の世界の美しさは、
  本物を見てもらわないと伝わらないと思う。
  一所懸命に画像を探したけれど、モノクロの画像しか見つからなかった。
  印象はかなり違うのだけれども、参考までにリンクをば↓
  
http://www.victorianweb.org/painting/millais/drawings/3.html
  これは是非絵葉書にしてほしかった・・・。



  
「マリアナ」 (油彩・板/1850-51年)
   ミレイ 「マリアナ」 1850-51年.jpg
  「オフィーリア」を知らなければ、この絵が油彩でベストと断言出来る気がする。
  色彩の美しさは、やはり本物を観てもらいたいところ。
  全体の色調の味わい深さもさることながら、
  青いドレスの光沢感の素晴らしさと、
  外の景色と一体化した様なステンドグラスの質感。
  ただただ素晴らしいの一言に尽きる。


  
「オフィーリア」 (油彩・キャンヴァス/1851-52年)
  そして目玉の「オフィーリア」が早々に登場。
  習作が隣に展示されているのも、絵の前の柵のおかげで
  人影が作品にかぶり難い配慮がされてるのも嬉しいところ。
  (まあ、その分間近に貼り付いて観る事は叶わないのだけれども。)
  この作品に関しては解説コーナーが別途設けられていて、
  ビデオ(約8分)も上映されていた上に、
  作品リストの一角にまで解説を掲載する力の入れ様。気合が半端ない。

  余談だけれど、額縁の花なんかも作中の花と関連があったりして、
  見る人が見ればわかるらしいのだけど、違いがわからない自分にしょんぼり。

  もうこの時点でこれでもかと傑作の洪水なんだけれど、その後息切れしない展示がすごい。

 
≪Ⅱ 物語と新しい風俗≫

  「救助」 (油彩・キャンヴァス/1855年)
  ミレイ 「救助」 1855年.jpg
  
この色の明暗の使い方。すごいとしかいい様がない。


  「1746年の放免令」 (油彩・キャンヴァス/1852-53年)
  ミレイ 「1746年の放免令」 1852-53年.jpg ミレイ 「1746年の放免令」 1852-53年 部分.jpg
    写真かと見まごう程の犬の毛の質感の描写にはただただ脱帽。

  「1746年の放免令」
 
 ≪1746年の放免令≫に基づくサミュエル・カズンズによる版画 (1856年刊行)
    そして上の絵をスキャンしたのかと思いたくなるリアルに複写した版画には驚くばかり。
   白黒でも伝わる犬の毛の光沢のリアルさには、何者かと。


≪Ⅲ 唯美主義≫
 
  「姉妹」 (油彩・キャンヴァス/1868年)
  ジョン・エヴァレット・ミレイ 「姉妹」 1868年.jpg
   少女のかわいらしさはさることながら、
   まるで写真の被写界深度を表したかの様な、
   背景
の遠近感の描写に妙にひきつけられた。


≪Ⅳ 大いなる伝統≫

   遊歴の騎士 (油彩・キャンヴァス/1870年)
  ミレイ 「遊歴の騎士」 1870年.jpg
  そういえば、横浜美術館で下村観山が模写したのを観たことがあったな。
  (それだけです、スミマセン。)
  下村観山の模写は横浜美術館のサイトで観る事が出来ます↓
  http://www.art-museum.city.yokohama.jp/cgi-bin/ymsii01.cgi?page=details_img&type=0&html=/syuzou/syu14.html&no=1988-DRJ-010


   ローリーの少年時代 (油彩・キャンヴァス/1869-70年)
  ミレイ 「ローリーの少年時代」 1869-70年.jpg 
  
(この画像ではよくわからないけど)
  モデルを務めたミレイの息子(特に左側)の美少年ぶりにびっくり。

   数点しかないコーナーだけれど、
   どれも存在感のある作品ばかりが展示されていた。


≪Ⅴ ファンシー・ピクチャー≫

  初めての説教 (油彩・キャンヴァス/1863年)    :左
  &
  「二度目の説教 (油彩・キャンヴァス/1863-64年) 
:右
  ミレイ 「初めての説教」 1863年.jpg ミレイ 「二度目の説教」 1863-64年.jpg
   きっと多くの人がこの作品について語ってると思う。
  子供好きでなくとも思わずひきつけられるかわいらしさ。


≪Ⅵ 上流階級の肖像≫

   ハートは切り札:
   ウォルター・アームストロングの娘たち、エリザベス、ダイアナ、メアリーの肖像」
 
 (油彩・キャンヴァス/1872年)
  ミレイ 「ハートは切り札」 1872年.jpg ミレイ 「ハートは切り札」 1872年 部分.jpg
   色々な自画像も興味深かったけれど、
  この作品の背景の東洋風屏風の方に興味がいってしまった。
  (該当部分を載せてみたけど、画像ではわかり難いですね。すみません。)



≪Ⅶ スコットランド風景≫

  「露にぬれたハリエニシダ (油彩・キャンヴァス/1889-90年)
  ミレイ 「露にぬれたハリエニシダ」 1889-90年.jpg

  『「月、まさにのぼりぬ、されどいまだ夜ならず」-バイロンの詩より』
  (油彩・キャンヴァス/1890年)
  ミレイ 『「月、まさにのぼりぬ、されどいまだ夜ならず」-バイロンの詩より』 1890年.jpg  

  ミレイ 『「月、まさにのぼりぬ、されどいまだ夜ならず」-バイロンの詩より』 1890年 部分.jpg わかりづらいけど実は画面の右端に鹿がいたり。


  風景画を描くとは知らなかったけれど、やはりうまい。
  その味わい深さは流石の一言。

 

いや、ミレイがこんなに素晴らしい画家だったなんて。
テートでの展示より出品数が少なかったらしいけれど、
十分ミレイの素晴らしさが堪能出来るいい展覧会だった。感謝。


#ご参考までにテート・ブリテンでのミレイ展サイトのURLをば↓
 http://www.tate.org.uk/britain/exhibitions/millais/


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コメント 8

とら

こんばんは。
とても良くまとめておられますね。
《聖アグネス祭前夜》の尼僧がミレイの自画像とは驚きでした。
それをエフィーが気付いたというのは2重の驚きでした。
 
by とら (2008-09-22 19:09) 

m25

>とらさん
 コメント&TB有難うございます。
 有難いお言葉を頂戴して、背筋が伸びると同時に舞い上がりそうになってます。
 
存知ませんでした。
 1つの絵に深いエピソードを持つ人なのだと改めて感心するばかりです。
by m25 (2008-09-23 02:54) 

satelier

私のページでも、この展覧会を書かせていただいたのですが、更に丁寧に書かれていて関心しました。
マグリットがお好きなようで。 とても嬉しいです。
マグリット、シュルレアリスムが大好きです。
まだこのBlogを始めて対して時間が経っていないので、記事が少ないですが、もし宜しかったら、見ていただけるとうれしいです。
by satelier (2008-09-25 01:23) 

m25

>satelierさん
コメント有難うございます。
拙い記事にお目を留めて頂けて嬉しいです。
シュルレアリスムの画家だけではなくロセッティも好きなので
ミレイ展も注目していましたが、予想以上に素晴らしかったです。
イギリスの芸術レベルの高さを見せつけられた感じがしました。

by m25 (2008-09-25 23:38) 

satelier

さっそくコメントありがとうございました。
承認制にした為、遅く表示されることになりすみませんでした。
ロセッティーも良いですよね。
どこか、空気がシュルレアリスムに通じるのかなと思います。
前回書き忘れたのですが、この風景画は、ターナーの影響を受けているというのがわかる気がしました。
by satelier (2008-09-26 18:11) 

m25

>satelierさん
何がどうってわけではないけど、何か通じるもの、ありそうですよね。
ターナーもさほど意識していませんでしたが、ミレイの風景画を観ると
やはり英国の風景画は凄いのかも、という気がしてきます。
by m25 (2008-09-28 00:25) 

いっぷく

いつもテートに常設されていたミレイの「オフィーリア 」が日本で見られたのは素晴らしいですね、この絵はよく見ていたのでなじんでいましたが、細部まで完璧に仕上げられていて感嘆ですね。草の一本一本まで見所たくさんです。
by いっぷく (2008-11-29 07:01) 

m25

>いっぷくさん
 「オフィーリア」、テートでもまさに「顔」でしょうね。
 草花に疎い身では、細部の凄さまで見分けられなくてしょぼーん、でした。
 解説パネルがあったので助かりましたが。
 今思い出しても充実した展示でしたが、いっぷくさんはテートでの展覧会はご覧になりましたか?
 ロンドンでも盛り上がったんでしょうね。
by m25 (2008-11-29 20:12) 

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