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南蛮の夢、紅毛のまぼろし 展@府中市美術館 [展覧会@日本美術]


南蛮の夢、紅毛のまぼろし 展
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/nanban/index.html

会場: 府中市美術館
会期: 2008年3月15日(土)~5月11日(日)

作品リスト(※PDFファイル) ↓
http://www.art.city.fuchu.tokyo.jp/01_Kikakuten/H19/nanban/namban-list.pdf
          


↓ チケット
スキャン0006.jpg


↓ チラシ外側

南蛮の夢、紅毛のまぼろし展_チラシ表_左.jpg南蛮の夢、紅毛のまぼろし展_チラシ表_右.jpg

↓ チラシ内側
南蛮の夢、紅毛のまぼろし展_チラシ裏_左.jpg南蛮の夢、紅毛のまぼろし展_チラシ裏_右.jpg



南蛮文化とくれば珍しい品が観れるのかもと思いつつ、そこまで強く関心があるわけでもないので、
鑑賞しようかどうかはっきり決めかねていたところに目にした1つの日本画。
鑑賞決定。

府中市美術館は、去年の動物絵画の100年展が素晴らしかったけど、
今回のもこぢんまりとしつつもバラエティに飛んでいて好企画。
企画展が大人600円で観れるというのも、物価の高い都下にあって出色。
多すぎない出品量も疲れないので個人的にはポイント高し。
(もちっと少なくてもいいぐらいだけど、それだと他の人は物足りないだろうと思われ。)

タイトルに南蛮、紅毛とあるだけあって、海外から持ち込まれた十字架やメダイ、
異人達を描いた絵や屏風、などなど、その交流が伺える品々が並ぶ。
長崎、堺に加え、仙台所蔵の品が多かった中に、
さり気なく自館の所蔵品が織り込まれていた。

絵だけでもなく資料も豊富で、
普段観ない様な品々が並ぶのが興味深い。

章立ては下記の通り。
 ・政宗と常長-歴史画の中の南蛮
 ・蘭学の風景
 ・南蛮・紅毛の追憶
 ・夢想する人々

 ・信仰、禁教


【政宗と常長-歴史画の中の南蛮】
伊達政宗にローマに派遣されて帰ってきたら
禁教令が布かれていたという、
不遇の支倉常長(はせくらつねなが)の像、
彼が率いた慶長遣欧使節関係資料のメダイや十字架等を展示。


【蘭学の風景】
当時の地図や、司馬江漢の画房を描いた作品等。


【南蛮・紅毛の追憶】
屏風 「南蛮人来朝之図」 (6曲1双  安土桃山時代・長崎歴史文化博物館蔵)
をはじめとする、渡来の様子を描いた作品や異人の姿を描いた作品に加えて
異人の食事風景を描いた絵が並ぶ。
その他、駱駝や象を描いた作品も。
また、川上澄生の木版画も幾つかあったが、まわりの品々と違う気配を感じさせたのは、
簡潔というかざっくりした線のせいか、大正~昭和という後の時代の人だからなのか。
(川上澄生はこの後の2つの章でも展示あり。)

ここで一際印象的だったのが、望遠鏡(江戸時代後期 18世紀終わり頃)。
えもいわれぬ美しさに、ガラスにへばりつく。
金属製の本体に表面を漆で仕上げ、オランダ人持参の銅版画をもとに
日本の職人が蒔絵で再現したという説明があったけれど、
ぱっと見はガラス管の表面に絵が描かれている様に見える。
装飾的な模様に加え、(額縁におさめられる様な絵の)ミニチュア版が
小さく描かれている職人技に感嘆。
しかしながら小さくてよく見えなかったのが残念。
単眼鏡があればカバーできたのだろうか。

他に、櫃螺鈿細工で作られた、絵を入れる櫃()があったのも
和洋折衷というか、不思議な感じだった。

また、ガラス絵なるものもあった。
色々な手法で描かれた作品が観られるのも今回の特色。


【夢想する人々】
後に南蛮文化に触発されて描かれた絵などが並ぶ。
前期だったので見てないのだけれど、参考までに川上澄生を1点。

川上澄生 「甲比丹散歩之図」 昭和28年(1953) 鹿沼市立川上澄生美術館
川上澄生 甲比丹散歩之図 昭和28年(1953) 鹿沼市立川上澄生美術館.jpg



幻想的な絵も味わいぶかかったけど、
額装も興味深かったのが、牛田けい村の3点。
(けい村のけいの字は、下記画像の文字。)
奚隹.JPG

額装が図録で見られるかどうかは買ってないのでわからないけど、
金地の上に絵を置き、額は漆塗りみたいな(しかも角がまるい)いう、
独特の風情が感じられるもの。
きっとこの拙い表現では実際の雰囲気は伝わらないかと・・・。
すみません。

牛田けい村 「蟹港二題 蛮船の泊」 1面 絹本着色大正15年(1926)
牛田村《蛮船の泊》「蟹港二題」より 1926年/絹本着色/63.0×113.0cm.JPG

牛田けい村 「蟹港二題 藁街の夕(中華街)」 1面 絹本着色大正15年(1926)
蟹港二題 藁街の夕(中華街).jpg



竹久夢二の作品が幾つかあったけれど、
いつもの少女趣味なイメージとは少し違う感じがして
独特の味わいが感じられた。

竹久夢二 「邪宗渡来」  2曲1隻  大正7年(1918)  夢二郷土資料館
竹久夢二 邪宗渡来 大正7年(1918) 夢二郷土資料館.jpg



【信仰、禁教】
天草四郎の肖像の他、表題どおり宗教に関するものが並ぶ。

板踏絵 キリスト像(エッケ・ホモ)
重要文化財 板踏絵 キリスト像(エッケ・ホモ)(長崎奉行所キリシタン関係資料).jpg
なんとも重々しい。



鏑木清方の「ためさるる日」は、
遊女による(行事としての)踏み絵の様子を描いた作品で、
左幅に今まさに絵を踏まんとする娘、右幅に順番待ちをする娘2人が
描かれているのだけど、なんと右幅のみの展示。
事情があるのかもしれないけれど、これは是非左幅もあわせて観たかった。
なんともふわっとした美しい筆遣いと緊張感すら漂うような空気がよかっただけに残念。

こちらが左幅か↓
http://ir.library.tohoku.ac.jp/rc/handle/123456789/29626



そしてこちら、
露千鈴 「
殉教者の娘」 1幅 絹本着色 大正15年(1926) 大阪市立近代美術館建設準備
三露千鈴 殉教者の娘 大正15年(1926) 大阪市立近代美術館建設準備室.jpg
なんとこちらは4月13日迄の展示だったとのこと。
チラシの小さい画像を見て、見逃したことをとても後悔。
大阪市、こんなよさげなものまでキープしてたとは・・・。



しかしなんといってもイチオシの一枚はこれ。
この一枚の為だけに足を運ぶ価値があるかと。

松本華羊 「伴天連お春」 大正5年(1916)頃 福富太郎コレクション
松本華羊 伴天連お春 大正5年 (1916)頃 福富太郎コレクション .jpg

処刑(殉教)前にせめて満開の桜を見たいと願った
遊女を描いたという作品。
筆遣いの細やかさはただただ素晴らしいの一言。
満開でありながら明るさではなく翳りを持つ桜の花に、
虚ろな目をした遊女のなんともいえない表情は、
まさに文字通り、もう逝ってしまったかの様。

松本華羊 伴天連お春 大正5年 (1916)頃 福富太郎コレクション 部分2.jpg

・・・と思ったら、焦点が定まらないかの様にすら思えた
その視線の先に、一つだけ花をつけてない枝がある様にも見えた。
松本華羊 伴天連お春 大正5年 (1916)頃 福富太郎コレクション 部分.jpg
まだ蕾だけなのか散ってしまったのか萼だけなのかよくわからないけど、
心ここにあらずで遠くを見ているのか、この枝に何か思いを馳せているのか、
どちらなのだろう。

展示スペースの都合上か最後から2つ目に展示されていたけれど、
この作品で最後を締めくくってもよかったかもと思う。
重いかもしれないけど。



府中市美術館、いい美術館だと改めて思った。今後にも期待。

ちなみに、去年の動物絵画の100年展の感想はコチラに↓
 ・動物絵画の100年・前期@府中市美術館
 ・動物絵画の100年・後期@府中市美術館
 ・「動物絵画の100年」展・おまけ


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いっぷく

府中市美術館ですか、おりしも、今日、明日は「例大祭」の
真っ最中ですね。「くらやみ祭り」と言って、伝統の大きなお祭りです。
お神輿、山車が大国魂神社を中心にたいへんな賑わいですよ。
・・・というのも府中で生まれ育っています♪。
この美術館ができる前に越してしまいましたからまだ行ったことないですが
よさそうなところですね。

福富太郎コレクションって彼は戦後のキャバレー王と言われている人ですね、相当な目利きの人のようでいいものも持っていますね。

松本華羊 「伴天連お春」は造詣がない私にも
名品のにおいを感じますね。
by いっぷく (2008-05-05 07:13) 

m25

>いっぷくさん
府中育ちでいらしたのですね。
お祭りのこと、全然知りませんでした。
なんだか後から知ることばかりです・・・。

この美術館、ちょっと駅から遠いですが、
混雑もなく、企画もよいので好感度高いです。
今回も興味深い品が沢山でした。

福富太郎氏は存じませんでしたが、いいものお持ちですね。
他のコレクションも気になります。

「伴天連お春」、ほんとよかったですが、
ベストは「殉教者の娘」だという方もいらして、
見逃したことに後悔しきりです。
by m25 (2008-05-06 12:05) 

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