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ベルギー王立美術館展 @ 長崎県美術館 [展覧会@マグリット]

昨年末に東京展は終わってしまいましたが、まだまだ長崎展、大阪展と続きます、
ベルギー王立美術館展


 ↑のチラシ、長崎市内の小中学生にのみ配られたレアモノ。
東京展のポスターを観て、「なんでこれでチラシをつくらないんだ」と非常に口惜しい思いを
しただけに、自分が願っていたものが現実に現れたことに感激しまくり。
もつべきものは地元の知人。有難うございました!
(しかし、これは一般にも配らないと勿体無い・・・。すごくいいチラシだと思う。)



↑こちらが一般用。やはり東京に引き続きブリューゲルで。


↑チケット。やはりここも基本のブリューゲルで。


東京で聴き損ねた、長崎県美術館学芸員の福満葉子さんの講演会を聴きに、長崎まで飛んだ。
(ほんとは明治大学教授の森洋子さんの講演会も聴きたかったんだけど・・・残念ながら叶わず。)

  
↑講演会は終わってしまったけど、こんなかわいい案内チラシ(1枚で両面に印刷)つくってました。
 いいですよね。

いや、基本的に遠征はマグリットメインの時しかやらないんだけど、行ってよかった、長崎展!
まず何がいいって、人が少なくて、ゆったり観れること。
東京も激込まではいかなかったけど、長崎ならブリューゲルの「イカロスの墜落」も
マグリットの「光の帝国」もほぼ貸切状態で堪能出来て、自分のペースで思う存分堪能出来るのが
なんたって嬉しい。

土・日と2日連続で行ったにも関わらず、日曜日はギャラリートーク50分を含め、3時間程かけて鑑賞。
こんなに長く一つの展覧会会場に滞在したことって多分初めて。
人が何時間も美術館に滞在したなんて話を見聞きして、そんなに?自分には無理なんて思ってたのに、
まさか自分がそれやるとは思ってもみなかった(疲れて気力が持たない)。
土曜日の講演会、日曜日の14時のギャラリートークの話をふまえてじっくり観ていたら、
16時の臨時ギャラリートーク(この日開催されたコンサート参加者向けで30分程)に
追い越されてしまった。
が、そのおかげで講演会後に聞き漏らしてしまった質問を担当学芸員さんに出来てラッキー。


巡回展をなぜ追いかけるかというと、会場によって空間の雰囲気が変わったりするのが興味深いから。
(会場限定の展示作品があったりもするので、それを追いかけるという側面もあるけど、まず↑。)
ただそれだけだったりするんだけど、今回は巡回展をおいかける醍醐味をしみじみ実感。

今回の展覧会は、ベルギー絵画の歴史を展望するものなので、古典→近代と時代の流れを追って
作品が展示されるのは自明の理というか、展示の流れが自ずと決まってくるものだけど、
そこに担当学芸員さんの個性というものがすごく感じられたのが何とも興味深かった。

時代の流れを追えば、今回の出品作品の中ではシュルレアリスムの絵画が最後に来るのは
当然なんだけど、マグリットがトリなんて・・・とファンはそれだけで感激してしまったり。

今回の展示方法でポイントになるのが、
ヴァレリウス・ド・サーデレールの「フランドルの冬」。
何気ない冬景色なんだけどちょっとブリューゲルを彷彿とさせる。
(ブログとか見てると浮世絵とか東海道五十三次を思わせるという方もいらっしゃる様だけど、
残念ながら自分はそこまで思い至らず。でもいったんこのブログにupしてから見直してみると、
確かに、色遣いというか木のラインというか、そんな風情がある様な気が。
ちょっと大阪でじっくり見直したい・・・。)


↑ヴァレリウス・ド・サーデレール 「フランドルの冬」 1927年

東京展でこの絵がトリだったのを観て、「え?なんでこれがここに?」
(↑年代的にちょっとだけだけどマグリットより前だったので)と思ってしまったのだけど、
担当学芸員の幸福輝さんにお伺いしたら、「最後にブリューゲル的なものを置こうと思って」とのこと。
成る程、ブリューゲルに始まってブリューゲルでしめるのかと感心。
(実際に1番最初に飾ってあったのは風景画で、「イカロスの墜落」は2番目の展示では
 あったんだけども、実質、ということで。)

対する長崎は、時代の流れを追って、シュルレアリスムの前にこの絵を展示。
展示順をちょっと変えるだけで、絵の流れが違和感なく追えてくる。今度は最後にマグリットがトリ。
個人的には折角だからトリの作品は「光の帝国」にしてほしいところだけど、展示スペースの
関係もあるとのことで、トリは「血の声」。
現代美術でもベルギーのアーティストは活躍してる様だけど(最近の動向には疎いので推測)、
ベルギーの、フランドルからの絵画の系譜を考えると、その流れを実感出来るのは
シュルレアリスム迄かなとも思う。
やはりマグリットがトリだと引き締まる様な気がするのは、ファンの欲目か。

サーデレールの「フランドルの冬」。案外この展覧会のキーとなる作品かなという気がする。
作品自体の印象より、周りの作品との兼ね合いが気になる絵って、なんとも微妙で印象深い。


また、東京展では隣り合わせで展示されていた、ルーベンスの「聖ベネディクトゥスの奇跡」と
ドラクロワによるその習作、長崎では展示スペースの関係で、狭いスペースに向かい合わせで
展示されていた。
絵画の同じ箇所を確かめるには左右が反対になってしまうけれども、振り向いて比較出来るのは
見え方(?)が新鮮で案外観やすかった。
東京展で観た時は大きすぎてわかりづらかった両者の絵の持つ雰囲気の違いが、
なんとなく感じられた様な気がした。


↑ペーテル・パウル・ルーベンス 「聖ベネディクトゥスの奇跡」 ?年(16-17世紀)


↑ウジェーヌ・ドラクロワ 「聖ベネディクトゥスの奇跡」 1841年
 

そしてもうひとつの展示ポイントが、ジェームズ・アンソールの「ロシア音楽」と、
フェルナン・クノップフの「シューマンを聴きながら」の配置。
この2つの絵は、クノップフが自分の真似をしたと、アンソールが難癖をつけて孤立を深めるという
いわくつきのものなんだけれど、東京展では、この2枚は並べられていたのでこのエピソードを
念頭に比較出来たのが、長崎展では、角のコーナーに、左の壁に「ロシア音楽」、
そしてアンソールの「怒れる仮面」、右の壁に「シューマンを聴きながら」といった配置で、
間に他の絵が一枚挟まっている。
あれ?と思って担当学芸員さんに尋ねてみると、「並べることによってそれぞれが割をくうから、
敢えて」とのこと。
確かに、エピソードにとらわれすぎて絵を素直に観難くなるという面もあるかもしれないと、納得。
しかしながら、角を挟んでるだけなので、両者を視界に入れて見比べることも出来るという、絶妙な配置。
配慮されてることにまた感心。

  
↑左: ジェームズ・アンソール  「ロシア音楽」 1881年
  右:フェルナン・クノップフ     「シューマンを聴きながら」 1883年

・・・こんな風に、同じベルギーながら、ブリューゲルという「古典」とアンソールという「近代」を専門と
されるそれぞれの学芸員さんの個性が出てくるのって、ほんとに興味深いとしみじみ実感。
このあたりのことは、単に観てるだけではわかりえなかったことで、お話を伺うことが出来て
本当によかったと思う。


この展覧会に関しては、まだまだ語り足りない気もするけど、随分長文になってしまったので、
今回はここまで。
(ちょっと書きなぐった感じで恐縮だけど、校正してたらいつまでもUP出来なさそうなので・・・。)


東京、長崎とまた違った味付けを大阪展で観ることが出来るのか、今から凄く楽しみだ。

ちなみに東京展での講演会等が気になる方は、是非こちらのTakさんのブログをどうぞ。濃いです↓
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=775



・・・大阪も人は多いので、ゆっくり堪能されたい方、長崎展はお勧めです。
美術館も新しくて綺麗だし、ミュージアムショップではなんと94枚もマグリットのポストカードを
揃えて下さってて(感激)、併設の川の上のカフェではベルギービールも頂けます。

↑ミュージアムショップのマグッズ

  
↑左: 美術館のカフェにて、セントルイスプレミアムクリーク
  右: ブリュッセルという名のケーキと珈琲の、カフェケーキセット¥600
     (王立美術館展チケット+カフェケーキセットで¥1550。1日20セット限定。)


残念ながらランタンフェスティバルは今日(3/4)で終わりですが、ちゃんぽん・皿うどんに角煮、
唐墨、海の幸にカステラ・・・。
長崎には美味しいものもタンとあります。春休みに観光も兼ねて、如何ですか?

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 ベルギー王立美術館展 @ 長崎
  2007年1月6日(土)~3月25日(日)
 長崎県美術館
 http://www.nagasaki-museum.jp/


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いっぷく

m25さんには垂涎ものの絵画展でしたね、最初のマグリッドのポスターすごくいいですね、すこししか作られなかったので貴重ですね。
ゆったりと時間をかけて鑑賞できることはすばらしいこと、
遠くまで出かけたかいもありましたね。
充実した力作の記事内容でわくわくしました。
by いっぷく (2007-03-10 11:58) 

m25

いっぷくさん、「わくわく」なんてすごく嬉しい褒め言葉です。有難うございます。
いつもなら記事一つ書くのにすんごい時間かかるんですが、
ちょっと盛り上がってしまって、勢いで熱く書き上げてしまいました。

いやもう、まさか「ベルギー王立美術館」としてコレクションが来てくれるなんて、
思ってもみなかったんで、ほんと嬉しい企画でした。
自分の知らないフランドル絵画が沢山あって、勉強になりました。奥が深いです。

最初に載せた写真、実はチラシなんです。
(長崎展ではポスターにはマグリットは使っていないので。)
でも東京展のポスターは確かこれと同デザインのもあって、
文字通り喉から手が出る程欲しくて欲しくて手を尽くしたのですが、
入手出来ませんでした。
出来栄えが素晴らしい(デザインと色合いが凄くいい!)だけに、
未だに凹んでいます・・・。

また大阪で新たなねたが拾える様に祈ってて下さいませ。
by m25 (2007-03-14 00:30) 

Tak

こんばんは。
コメント&TBありがとうございます。

長崎展のチラシの方が魅力的ですね。
大阪展のチラシご覧になられました?
全然趣が違います。
感想は・・・控えます。
by Tak (2007-03-28 01:14) 

m25

>Takさん
 いいでしょう、このチラシ!
 青空の水色とベースの濃紺のブルーのコラボ、
 マグリット好き&青好きには堪りません。
 自分が作ったわけでもないのに、自慢したくなります。
 が、それ故、東京展のポスターをGET出来なかったトラウマが消えません・・・。
 
 大阪展のチラシ、東京国立近代美術館でGETしました。
 良し悪しは判断しかねるのですが、ある意味斬新ですよね。
 でも折角ならば、東京展のポスターを振り分けて、
 東京→ブリューゲル@赤、長崎→マグリット@青、大阪→ヨルダーンス@黄でも
 よかったんじゃないかな、なんて思ってみたりしました。
 が、あえてオールドマスターに絞ったなんて、前2会場でのマグリットの集客力を
 認識してないんだろうかとも思いました。
 オールドマスターバージョンと近代バージョンとの2パターンあればいいんですが。
 大阪展、ポスターもチラシと同デザインなんでしょうか。
by m25 (2007-03-29 21:39) 

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